この記事の要点:
- インハウスSEOとは、SEOの計画・実行・効果測定を、自社の社員が中心になって行う進め方です。すべてを社内で行う形だけでなく、判断は社内、作業の一部は外部という形も含めて考えます。
- 社内に残すべきなのは「何を目指し、何を書き、何を直すかを決めること」「事実の確認」「Search Console と GA4 の管理権限」です。執筆の一部、技術的な実装、診断は外部に任せやすい作業です。
- 体制は、責任者・編集・専門の確認・技術・計測の 5 つの役割で考えます。人数が少なければ兼任してよく、役割ごとに「誰が決めるか」を書いておくことが大切です。
- メリットは、商品と顧客を知る社員が判断でき、知識と記録が社内に残ることです。デメリットは、担当者の時間と育成が要り、自己流や担当者 1 人への依存に陥りやすいことです。
- Google は、SEOに取り組む方法として自分で学ぶことも専門家に頼むことも示しています。どちらでも、変更の効果を見極めるには時間がかかります。
インハウスSEOとは:判断を社内に置く進め方
インハウスSEO(in-house SEO)とは、検索からの集客を増やす取り組みを、外部の会社に任せきりにせず、自社の社員が中心になって進めることです。「SEOの内製化」とも呼ばれます。
実際には、すべてを社内で行うか、すべてを任せるかの二択ではありません。どこまでを社内で行うかで、次の 3 つの形に分けて考えると、自社に合う形を選びやすくなります。
| 形 | 社内で行うこと | 外部に任せること | 向いている状況 |
|---|---|---|---|
| インハウス(内製) | 計画、執筆、確認、実装、効果測定のほぼすべて | 必要なときの相談や研修 | 担当者を置け、サイトを自社で更新できる |
| セミインハウス(一部内製) | 方針、テーマの決定、事実の確認、効果測定 | 執筆の一部、技術的な実装、定期の診断 | 判断はできるが、作業の手が足りない |
| 外注中心 | 目的の共有、原稿の事実確認、成果の確認 | 調査、計画、執筆、実装の大部分 | 担当者を置けない、短期で大きな改修がある |
Google の「SEO スターター ガイド」は、自分で SEO を学ぶ人に向けた入門の文書です。一方で「SEO の専門家が必要かどうか」という文書では、専門家に依頼するときの確かめ方を説明しています。Google はどちらか一方を勧めているわけではなく、自社の時間と知識に合わせて選ぶものとして扱っています。
インハウスSEOのメリット・デメリット
インハウスSEOには、社内に判断を置くことで得られる利点と、社内で引き受ける負担があります。次の表で並べて比べます。
| 観点 | メリット | デメリット・注意点 |
|---|---|---|
| 判断の質 | 商品と顧客を知る社員が、テーマと内容を決められる | 社外の視点が入りにくく、やり方が自己流になりやすい |
| 知識の蓄積 | 施策の理由と変更の記録が社内に残る | 担当者が 1 人だと、異動や退職で取り組みが止まりやすい |
| 速さ | 記事の修正や公開を、社内の判断ですぐ行える | 担当者の時間を、業務として確保する必要がある |
| 費用 | 外部への支払いを抑えられる場合がある | 人件費、教育、道具の費用がかかり、総額が下がるとは限らない |
| 技術 | サイトの仕組みを社内で把握できる | 移転や大きな改修など、経験の要る作業は判断を誤りやすい |
デメリットの多くは、作業の一部を外部に任せる形(セミインハウス)にすることや、記録と確認の手順を決めておくことで小さくできます。また、Google の「SEO スターター ガイド」は、変更の効果が表れるまで数時間から数か月かかることがあるとしています。時間がかかることを、始める前に社内で共有しておきます。
自社に向いているかの判断
次の表で、当てはまる行が多い列を見ると、どの形から始めるかの目安になります。
| 確かめること | 内製に寄せやすい | 外部の手を借りたい |
|---|---|---|
| 担当者の時間 | SEOに使う時間を、業務として確保できる | ほかの業務の合間にしか時間がない |
| 書く材料 | 商品資料、よくある質問、事例が社内にある | 材料が散らばっていて、集める人がいない |
| サイトの更新 | 社内で記事を公開し、設定を変えられる | 変更のたびに制作会社への依頼が要る |
| 技術的な課題 | 大きな移転や作り直しの予定がない | ドメインの変更や、仕組みの作り直しが控えている |
| 社内の合意 | 成果が出るまで時間がかかることを、上司が理解している | 短い期間で結果を求められる |
Google は、専門家に頼むなら早いほうがよく、サイトの作り直しや新しいサイトの立ち上げを考えているときがよい時期だと説明しています。作り直しの時期だけ外部の手を借り、ふだんの記事づくりは社内で行う、という組み合わせもできます。
社内で行うことと、外部に任せやすいこと
インハウスSEOで最初に決めるのは、作業の分け方です。「自社にしか判断できないこと」と「手順が決まっていて、外部でもできること」を分けます。
| 作業 | 社内に置く理由・任せる条件 | 判断 |
|---|---|---|
| 目的と成果の定義(何を成果とするか) | 事業の数字と結びつくため、社内でしか決められない | 社内 |
| テーマ・キーワードの決定 | 候補の調査は任せられるが、採否は商品と顧客を知る社内で決める | 調査は外部可、決定は社内 |
| 原稿の事実確認・専門の確認 | 仕様、価格の条件、事例の正しさは社内でしか確かめられない | 社内 |
| 執筆 | 構成と材料(自社資料・事例)を渡せば任せられる | 外部可 |
| 技術的な実装(転送、構造化データ、表示速度) | サイトの仕組みを扱える人がいれば社内、いなければ外部 | 状況による |
| サイトの診断 | 定期的に第三者の目で見てもらう価値がある | 外部可 |
| 効果測定と次の判断 | 数字を集める作業は任せられるが、続けるか直すかは社内で決める | 集計は外部可、判断は社内 |
この記事では、社内に何を残すかを中心に扱います。
体制の作り方:5つの役割と兼任の例
インハウスSEOの体制は、人数ではなく役割で考えます。役割ごとに「誰が決めるか」が決まっていれば、少人数でも回ります。人も予算も限られる会社が最初の 3 か月で進める順番は中小企業のSEO対策で紹介しています。
| 役割 | 決めること・行うこと | よくある兼任先 |
|---|---|---|
| 責任者 | 目的と優先順位を決める。社内の合意をとる | マーケティングの責任者、事業の責任者 |
| 編集 | テーマ、構成、公開の順番を決める。原稿をそろえる | 担当者本人 |
| 専門の確認 | 仕様や事例の正しさを確かめる | 営業、技術、サポートの担当者 |
| 技術 | サイトの設定、転送、表示速度、構造化データ | 情報システムの担当者、制作会社 |
| 計測 | Search Console と GA4 を見て、月ごとの記録を作る | 編集と同じ人 |
例:担当者が 1 人の会社なら、編集と計測を担当者が行い、専門の確認を営業部門に月に一度まとめて頼み、技術の作業は制作会社に依頼する、という分け方があります。専門の確認を担当者 1 人で済ませないことが、内容の正しさを保つうえで大切です。
SEO担当者の仕事内容と、必要な知識
社内のSEO担当者の仕事は、検索からの集客について「何を直すか」を決め、社内外の作業をそろえ、結果を数字で確かめることです。Googleは「SEO 業者の利用を検討する」で、SEOの専門家が提供しうるサービスとして、サイトのコンテンツや構成の見直し、技術的なアドバイス、コンテンツの開発、キーワードの調査、SEOのトレーニングなどを挙げています(SEO 業者の利用を検討する、2026年10月13日確認)。社内の担当者は、これらを自分で行うか、任せた作業の結果を確かめる立場になります。
| 仕事 | 必要な知識・道具 |
|---|---|
| 検索での見え方と、登録の状態を確かめる | Search Console の検索パフォーマンス、ページのインデックス登録、URL 検査 |
| サイトに来た人が成果につながっているかを見る | GA4 のランディング ページ、キーイベント |
| テーマと検索語を決め、構成を作る | キーワードの調べ方、検索意図の読み取り |
| 原稿の正しさと分かりやすさを確かめる | Google の「有用で信頼性の高いコンテンツ」の考え方、社内の専門の確認の段取り |
| 技術的な問題を見つけて、直す人に伝える | HTML の基本、リダイレクト・canonical・noindex の意味 |
すべてを1人で深く知っている必要はありません。担当者を決めるときや採用するときは、資格や知識の量より、自分で調べて公式の資料で確かめ、行った変更と結果を記録して説明できるかを見ます。学び始めの順番はSEOの勉強方法で紹介しています。
決める人を書いておく
役割が曖昧だと、原稿が「確認待ち」のまま止まります。次の 3 つは、文書で決めておきます。
- 記事の公開を決める人と、その人が不在のときの代わり
- 専門の確認を頼む相手と、返事の期限
- 既存の記事を直す・統合する・消すときに、誰の了承が要るか
社内の合意をとるときに伝えること
インハウスSEOは、担当者だけでなく、確認を頼む部門や上司の協力が要ります。始める前に、次の 4 点を文書にして共有します。
| 伝えること | 内容の例 |
|---|---|
| 目的 | 自然検索から、どの行動(問い合わせ、資料請求など)を増やしたいか |
| 見る数字と報告の頻度 | 毎月、表示回数・クリック数・自然検索からの成果を同じ表で報告する |
| 時間の見込み | Google の「SEO スターター ガイド」は、変更の効果が表れるまで数か月かかるものもあるとしている。社内で行う場合も、短い期間で判断しない |
| 他部門に頼むこと | 専門の確認の担当者と、1 本あたりにかかる確認の手間の見込み |
始める手順
- 目的を 1 文で書く:「誰に、記事を読んだ後、何をしてほしいか」を書きます。成果として数える行動(問い合わせ、資料請求など)もここで決めます。
- 今の状態を記録する:Search Console の表示回数とクリック数、GA4 の自然検索からの訪問と成果の数を、始める前の値として残します。
- 道具と権限をそろえる:Search Console と GA4 を自社の名義で持ちます(次の節)。
- 最初のテーマを絞る:自社が答えられる疑問のうち、顧客によく聞かれるものから始めます。数を増やすより、1 本ずつ確かめながら進めます。
- 書き方と確認の決まりを文書にする:文体、出典の書き方、数字の扱い、確認の順番を決めます。担当者が変わっても同じ品質で続けるためです。
- 月ごとに振り返る:決めた数字を同じ表に記録し、続ける・直す・やめるを決めます。
1か月の進め方の例
例:担当者 1 人と、確認を頼む部門がある会社の 1 か月の流れです。説明用の例で、作業量は会社によって異なります。
| 時期 | すること | 担当 |
|---|---|---|
| 月の初め | 前の月の数字を記録し、今月書く記事と直す記事を決める | 編集・計測 |
| 月の前半 | 構成を作り、材料(資料・事例)を集めて原稿を書く。一部は外部に依頼する | 編集、外部 |
| 月の半ば | 専門の確認を依頼し、指摘を直す | 専門の確認、編集 |
| 月の後半 | 公開し、URL 検査でインデックスの状態を確かめる。変更の記録を残す | 編集 |
Google の「SEO スターター ガイド」では、変更の効果が表れるまでの時間は数時間から数か月まで幅があり、効果を見極めるには数週間待つことを勧めています。始めてすぐの数字だけで体制の良し悪しを判断しないよう、社内で先に共有しておきます。
道具とアクセス権:自社の名義で持つ
インハウスSEOの土台は、Search Console と GA4 を自社が管理していることです。外部の会社のアカウントで作られていると、契約が終わったときにデータを見られなくなるおそれがあります。
| 道具 | 自社が持つべき権限 | 外部に渡す権限の目安 |
|---|---|---|
| Search Console | 確認済みの所有者を、自社の社員(できれば 2 人以上)にする | 作業に必要な範囲で「フル」または「制限付き」のユーザー |
| GA4 | 管理者の役割を自社の社員が持つ | 作業に応じて編集者、マーケティング担当者、アナリスト、閲覧者から選ぶ |
Search Console ヘルプでは、ユーザーの追加や権限の変更ができるのは所有者だけとしています。GA4 では、管理者・編集者・マーケティング担当者・アナリスト・閲覧者の役割があり、ユーザーの管理は管理者が行います。また、Google の「SEO の専門家が必要かどうか」では、依頼先にサイトを診断してもらう段階では Search Console の読み取りだけの権限を渡し、書き込みの権限はまだ渡さないよう勧めています。退職や契約終了のときに権限を外す手順も、あわせて決めておきます。
外注からインハウスに移るときの引き継ぎ
これまで外部に任せていた作業を社内に移すときは、契約が終わる前に次のものを受け取ります。終わった後では、手に入らなくなるものがあります。
| 受け取るもの | 確かめること |
|---|---|
| Search Console と GA4 の権限 | 所有者・管理者が自社の社員になっているか。外部の権限を外す日 |
| 変更の記録 | いつ、どのページで、何を変えたか(転送、noindex、構造化データなど) |
| 記事の一覧と狙った検索語 | 記事ごとの担当の検索語、公開日、最後に直した日 |
| サイトの設定ファイル | robots.txt、サイトマップの作り方、転送の設定、リンクの否認ファイルの有無と理由 |
| 原稿と画像の権利 | 記事や画像を、契約の後も自社で使い、直せるか |
| 進行中の作業 | 途中の原稿、依頼済みの修正、次に予定していた作業 |
あわせて、引き継いだ日の Search Console と GA4 の数字を記録しておきます。移った後に数字が動いたとき、体制の変化によるものかを比べられます。
続けるための仕組み:記録と学び方
インハウスSEOが止まる原因の多くは、担当者が 1 人で抱え、記録が残らないことです。次の 3 つを仕組みにします。
- 変更の記録:いつ、どのページの、何を、なぜ変えたかを残します。数字が動いたときに理由を探せます。
- 情報の入り口を決める:Google 検索セントラルのドキュメントとブログ、検索ステータス ダッシュボードを定期的に見ます。出どころの分からない情報で施策を変えないようにします。
- 確認の手順を決める:公開前の確認項目を表にし、誰が見ても同じ確認ができるようにします。
担当者がSEOを学ぶ順番、Googleの公式の学習資料、資格の受験料と形式は「SEOの勉強方法」にまとめています。
公式の情報をどこで確かめるか
| 情報源 | 分かること | 見る頻度の例 |
|---|---|---|
| Google 検索セントラルのドキュメント | 仕様と推奨の方法。迷ったときの判断の基準 | 施策を決める前に、該当する項目を読む |
| ドキュメントの更新履歴 | 説明が追加・変更されたページ | 月に一度 |
| Google 検索セントラル ブログ | 新しい機能、方針の変更の発表 | 月に一度 |
| 検索ステータス ダッシュボード | アップデートの開始と完了の日、障害 | 数字が大きく動いたとき |
| Search Console のメッセージ | 自社サイトの問題の通知 | 届いたとき。通知先を複数の人にしておく |
社外のセミナーや記事で知った情報は、上の情報源で裏付けが取れてから施策に入れます。裏付けが取れない話は「仮説」として記録し、小さく試して確かめます。社内で決めておく戦略の項目と優先順位の付け方は「SEO戦略とは」で説明しています。
当サイト(seoagent.jp)の改善記録では、1 件ごとに「起きていたこと」「行ったこと」「結果の確かめ方」を残しています。例えば、日本語記事 9 本の title が 40 字を超えていたため、主キーワードを前に出して 40 字以内に直し、点検用のスクリプトで 40 字を超えるものが 0 件になったことを確かめました。確かめ方まで書いておくと、別の人が同じ確認を繰り返せます。
うまくいかないときの見直し
| 起きていること | 見直すところ |
|---|---|
| 公開が止まる | 確認の役割と期限。確認を頼む相手が多すぎないか |
| 記事は増えたが表示されない | インデックスされているか。テーマが自社の顧客の疑問と合っているか |
| 表示はあるが成果がない | 記事から次の行動への案内。成果の数え方が正しいか |
| 担当者の負担が大きい | 外部に任せられる作業を、前の表で選び直す |
社内の人件費や外部に頼む費用の考え方はSEO対策の費用が決まる要素で整理しています。記事づくりの進め方はコンテンツSEOの手順が参考になります。インハウスSEOと関わるAIO・LLMOの基礎の記事は「AIO・LLMOの基礎の記事一覧」にまとめています。
よくある質問
SEOの担当者は専任でないと無理ですか?
専任でなくても始められます。大切なのは、SEOに使う時間を業務として決めておくことです。時間が足りない部分は、執筆や実装などの作業を外部に任せ、判断と確認を社内に残します。
外注からインハウスに切り替えるときに、最初にすることは?
Search Console と GA4 の所有者・管理者が自社の社員になっているかを確かめます。次に、これまでの変更の記録、作った記事の一覧、使っていた検索語の一覧を受け取ります。切り替えの前後で数字を比べられるよう、その時点の値も残します。
何から学べばよいですか?
Google の「SEO スターター ガイド」と「Google 検索の基本事項」から始めるのが確実です。そのうえで、自社サイトの Search Console のデータを見ながら、気になった項目のドキュメントを読む順番にすると、学んだことをすぐ試せます。
外部の診断は、どんなときに頼むとよいですか?
サイトの作り直しや移転の前、数字が大きく下がって原因が分からないとき、社内の確認が自己流になっていないかを見直したいときです。Google は、診断を頼む段階では Search Console の読み取りだけの権限を渡すよう勧めています。
インハウスにすると費用は下がりますか?
一概には言えません。外部への支払いは減っても、社員の時間や道具の費用がかかります。費用の比べ方は、作業ごとに社内と外部のどちらで行うかを決めてから見積もります。
SEOAGENTでできること
SEOAGENT は、テーマの候補選びから記事の作成、公開前の確認、公開後の分析と改善までを扱う記事制作の支援ツールです。自社の資料・写真・文体を登録して記事づくりの材料にでき、担当者が変わっても同じ材料と書き方を共有できます。
公開前の品質チェックでは、確認が必要な点を項目ごとに示します。公開後は Search Console と GA4 を連携して、記事ごとのクリック、表示回数、自然検索からの訪問とキーイベントを確かめられます。チェックは正確性や検索順位を保証するものではなく、最終的な確認は担当者が行います。



